研究概要 |
基板ホルダバイアスRFマグネトロンスパッタ装置を用い,セルフテンプレート法によりa軸配向YBa_2Cu_3O_X(YBCO)酸化物薄膜を(100)SrTiO_3(STO)基板上に成膜した.その超伝導特性,結晶配向性,表面等の基板ホルダバイアス依存性から-20Vの適当なバイアス電圧を得た. YBCO膜上にいくつかの厚さのSTOまたはPrGaO_3(PGO)バリア層をイオンビームスパッタ法で堆積し,その上にAuを真空蒸着してex-situで作製したSIN接合は前年度の報告より薄いバリア厚でピンホールの影響の少ない微分コンダクタンス-電圧特性(G-V特性)を示した.さらに,バリアの厚さを薄くするにしたがって,G-V特性における約20mV近傍でのGの傾きの変曲点が分かりやすくなる傾向にあった.STO,PGOのバリア材料によるこの傾向の大きな違いはなかったが,この変曲点はPGOよりSTOバリアの方がはっきり見えた. STO/YBCO膜のYBCO表面の劣化層を除くためにBrエタノールでYBCO表面をエッチングやSTO/YBCO界面のin-situ作製とex-situ作製とのG-V特性の比較を行った. in-situで作製したSTO/YBCOを用いたSIN接合において400℃大気圧酸素中で適当な時間熱処理することによりG-V特性上の約20mV近傍でのGの傾きの変曲点が分かりやすくなる傾向になった.また,バックグランドコンダクタンスの傾きは熱処理時間を長くすることにより急になる傾向にあった. a軸配向度0.96以上のYBCO/STO/YBCOの3層構造膜を利用してSIS接合の試作をおこなったが,今後さらにバリア/YBCO界面を検討し,SIS接合を得るための知見を得たい.
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