電子セラミクスには、結晶粒界および界面の特性を積極的に利用することにより、優れた特性を発現させているものが多い。チタン酸バリウムPTCRセラミクスは、結晶粒界の特性を利用する優れた電気特性を示す材料の一つである。本研究では、PTCRセラミクスの粒界特性、特に粒界界面準位の形成について定量的に明らかにすることを目的とした。 PTCR特性は酸化処理により、その特性を大きく変化させる。このことは粒界界面準位形成に酸素が関連していることを示唆している。そこで異なる酸化条件で試料を酸化し、抵抗値の変化を調査した。その結果、不連続に抵抗値が上昇する酸化量の存在を確認した。これは、添加したアクセプターの価数が酸化により変化し、界面準位のエネルギー位置が変わることで説明できた。この結果をもとに現象論的PTCRモデルを提唱し、酸化とPTCR特性の関係を明らかにした。これについては、J.Am.Ceram.Soc.へ投稿した。 次に、アクセプタードーパントの界面準位形成への寄与を調査するために、アクセプターのドープ量の違いによる界面準位のエネルギー位置、および準位密度を調査した。その結果、ドープ量の増加により、深い界面準位を形成することがわかった。またアクセプターのドープによる電気特性の向上は、準位密度の上昇によるものではなく、深い界面準位の形成によることを明らかにした。これは、Materials Processing and Design IIへ投稿した。 焼結助剤とPTCR特性に関するコメントを、J.Am.Ceram.Soc.へ投稿した。
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