平成6年度の助成を受けて反応炉を窒素系に改造し、本研究の主たる研究目的である窒化ガリウム・インジウム(GaInN)混晶膜へp形不純物であるマグネシウム(Mg)のド-ピングを行ってきた。ドープされたMgは、フォトルミネセンス(PL)スペクトルやPL強度の温度依存性の測定から判断して、GaInNの伝導帯の底から150meVのところに不純物準位を形成している。GaInN混晶膜の抵抗率は、Mgのド-ピングによって大幅に像かし、窒素空孔がある程度補償されていることを示している。しかし、窒化ガリウム(GaN)ではp形膜を得ているものの、GaInN混晶膜ではp形膜を得るに至っていない。これは、GaInN混晶膜では結晶欠陥(窒素空孔)が多く、キャリア濃度が10^<19>cm^<-3>程度であるので、Mgのp形ドーパントを添加してもある程度補償できるものの、それらを全部補償し、p形に変わるまでには至っていないことを示している。II-VI族系でもp形膜が得られているのは、いずれも水素系でない製膜システムである。原子状の水素がド-ピングされたアクセプタを不活性にする(水素パッシベイション)と考えられており、それらを他のエネルギーを供給して解離させることが必要である。本研究では、窒素空孔を如何にして減らすかが大きな課題である。製膜時に紫外線を照射してアンモニアの分解を促進しているが、まだ不十分であり、製膜時の圧力を高くすることが必要であると同時に、ラジカル窒素の供給方法を考慮することが必要である。また、製膜後の熱処理方法の最適化を図る必要がある。
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