研究概要 |
本研究の目的は、焼結Wフェライト磁石の磁気特性向上、並びにボンド磁石用W型フェライト微粉末を作製するこである。 まず、焼結W型フェライト磁石の磁気特性向上に関しては、BaZn_2-Wフェライト並びにSrZn_2-WフェライトへのNa_2O単独添加、あるいはNa_2O、BaO(SrO)の複合添加は磁石特性が無添加の試料に比べ、(BH)maxで75-84%向上することが知られ、保磁力ではSrZn_2-Wフェライトに単独、あるいは複合添加した場合に80%程度向上することが知られた。また空気中焼結SrZn_2-Wフェライトでは(BH)_<max>=22.8kJ/m^3の世界最高の磁石石特性が得られた。BaZn_2-Wフェライトでは(BH)_<max>=22.8kJ/m^3が得られた。Na_2O,BaO(SrO)の複合添加は、比較的低い焼成温度(1225℃)でW相単相が得られ、結晶の安定化にも寄与していることが知られた。 また、BaZn_2-WならびにSrZn_2-WフェライトへのLi_2O単独添加、あるいはLi_2O、BaO(SrO)の複合添加については、無添加の試料に比べ、BaZn_2-WフェライトにLi_2単独添加、あるいはLi_2BaOの複合添加は磁石特性が無添加の試料に比べ、(BH)maxで70%向上することが知られ、特に顕著な結果が得られたものは、BaZn_2-Wフェライトに複合添加した試料では空気中焼結でBaZn_2-Wフェライトでは(BH)_<max>=20.3kJ/m^3の磁石特性が得られた。SrZn_2-WフェライトではLi_2O単独添加では、W相単相は得られなかった。複合添加で単相になったが、(BH)maxではBaZn_2-Wフェライトに比べ値は低かった。また、複合添加は比較的低い焼成温度(1175℃)でW相単相が得られ、結晶の安定化にも寄与していることが知られた。 一方、ポンド磁石用W型フェライト微粉末を作製することに関しては、1995年度に科研費で購入した遊星ボールミルによる実験は、遊星ボールミルの使用条件と材料のハンドリングに時間がかかり、当初の目的を完全に達成するとはできなかったが、メカニカルグラインデイングによりSrO・2ZnO・nFe_2O_3(n=7,8,9)の組成について行った。その結果、n=7の組成において、10時間のメカニカルグライデイングの後、1000-1200℃の温度範囲で熱処理を行うことにより、保磁力(Hd)180kA/m(2.25KOe)、σ_s=80.5Wbm/kg(64.0emu/g)が得られた。ボンド磁石用粉末として使用できることが知られた。また、これらに先に報告したような添加物を添加すると、さらに、保磁力が増加するものと思われるので、今後これらの研究を進めて行きたい。このように、研究は順調に進み、ほぼ所期の目的を挙げることができた。
|