超高密度バリウムフェライト(BaM)薄膜媒体を実現するために不可欠な、BaM薄膜中の結晶粒子サイズを微細化するための方法を検討するとともに、より良好な配向性と結晶性を持つBaM膜をより低温で作製するため、原子層積層法という新しい薄膜作製法によるBaM薄膜の作製を試み、以下の結果を得た。 (1)結晶粒子の微細化について (1)BaM薄膜の膜厚を30nm以下にすることにより、結晶粒径を30nm以下に微細化できること、(2)初期成長層の堆積時にイオン衝撃を行うことで、初期成長層の核密度を増加させることができ、その結果として結晶粒径の微細化が可能なこと、(3)下地層としてC軸配向ZnO薄膜を用いた場合、500℃以上の高温領域ではZnの拡散が容易に起こり、(111)配向Znフェライト層が形成され、その上に容易にc軸配向BaM薄膜が形成されるものの、ZnO下地層の結晶粒子の微細化によるBaM薄膜の微細化には有効で無いことが分かった。 (2)原子層成長法によるC軸配向BaM薄膜の作製 BaM結晶がC軸方向にBaイオンの含まれないスピネル層(S層)と酸素イオンの一部がBaイオンで置換された層(R層)とが、約11.5Å周期で積層された構造となっていることに注目し、それぞれの原子層を交互に積層する事によって良好なc軸配向BaM薄膜を作製するとを試みた。その結果、本研究で提案した原子層積層法により良好な結晶性を持つ板状結晶からなる膜が得られることが明らかになった。しかし、この方法による低温成膜の実現に関しては、さらに検討することが必要であるとが分かった。また、この手法はW形のバリウムフェライト薄膜などの作製にも有効であると考えられ、その他積層構造を持つ薄膜の作製法として有望であることが明らかになった。 今後、この薄膜作製法による結晶粒微細化の検討、低温成膜法の実現、W形Baフェライト薄膜の実現などの検討を進めていく予定である。
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