研究概要 |
本年度は、正方晶系PZTセラミック材料のドメイン構造を調べるため、X線回折法により(002),(200)回折強度の分極電界依存を求め、強誘電体セラミック中の90°および180°ドメインの挙動を明らかにした。すなわち、セラミック内部におけるドメインの挙動と(002)回折線の相対強度(I002=I(002)/{I(002)+I(200)}),電気機械結合係数(kp),周波数定数(fcp)の関係を見出し、これら実測値を我々が仮定した正方晶ドメイン構成モデルを用いて評価した。その結果、分極による各ドメイン構成の変化挙動はI002からモデルに基づいて計算したc,c^*(cの逆向き),b(cと直角),b^*各軸方向のドメインの占有面積変化から求めることが出来た。 この組成系では分極電界強度(E)に対して180°ドメイン量のピークが1つ(E=±2.5kV/mm)、90°ドメイン量のピークが2つ(E=±2.0kV/mm,±3.0kV/mm)存在した。さらに、分極電界印加方向を交番させることにより、90°ドメインは180°ドメイン化し、180°ドメイン量は交番回数の増加と共に増加した。また、E=±2.0〜±2.5kV/mmでのkpの急激な減少は主に180°ドメインの電界による反転挙動に一致していた。Eによりcまたはc^*軸方向に変化した量、すなわち、c⇔c^*の180・(度)回転およびb^*⇒c,b⇒c^*の90°回転によりc,c^*軸方向に移動した配向量とfcpはEに対して同一挙動を示した。E vs. kpの関係からc,c^*軸配向したドメインが電荷的にキャンセルする時(↑↓)、kpは極小傾向を示し、fcpは約2680Hz・mと大きな値をとった。一方、cまたはc^*軸方向に電荷的に揃った場合(↑↑または↓↓)、kpは最大値、fcpは約2660Hz・mと低い値を示した。この様にfcpとドメイン内の電荷の向きとを関係づけることが出来き、本解析方法がPZTセラミックバルクだけでなく、分極反転を利用する不揮発性強誘電体メモリ材料であるPZT薄膜の開発研究にも有用であることが確認された。
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