研究概要 |
本研究は2年間の計画であり,本年は初年度ということで,気体マイクロフォン法を用いた光音響分光法の基礎的な解析を理論と実験の両面から展開した。特に光音響信号の発生機構に注目し,板状試料および粉体試料について,以下の項目について研究を行った。 1.板状固体の光音響信号発生機構の理論として広く受入れられているRG理論に基づいて計算を行い,測定条件の検討を行った。同時にCdSバルク単結晶を用いて試料を作成し、実験結果との対応を検討した。その結果,試料厚さ1mmと2mmのものではRG理論とよい対応を示したが,3mmの試料では理論と実験結果が合わず,試料の形状や熱的性質を考慮した解析が必要であることが判明した。 2.粉体試料については,既に研究の蓄積のある希釈法を用いて実験的研究を中心に進めた。特に光音響信号の位相特性より,標準試料との比較により吸収係数の定量的評価が可能であることが判明した。しかし,今年度の実験ではカーボンを標準試料として用いたが,CdsやCuGaS_2を粉末状にして測定した結果,透過法等の方法で測定された既知のデータと比較すると,半定量的な一致を見たものの,十分な精度は得られなかった。また、粉末状にしたために生じる表面吸収の問題も今後解析していく必要性が明らかになった。さらに、熱的特性の評価法についての基礎的な実験を行った。 以上の初年度の結果をふまえ,2年後は気体マイクロフォン法による定量的評価を目指すとともに、低温領域での熱的・光学的特性の評価を行うため、光音響分光法と類似した光熱効果を用いた実験も行う予定である。
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