本研究では、安価なアルミニウム基盤を陽極酸化することによって生ずる細孔(ボア)に各種の媒質を封入する技術を確立すると同時に、光学特性に優れ、且つまた、大量生産に適する光デバイスの製作法について研究することを目的とした。得られた成果は以下の通りである。 1。低温・大電流陽極酸化による大口径偏光子の製作 通常の陽極酸化法で用いられている電流密度の、1桁以上大きな電流密度で陽極酸化すると、アルミニウムの一部は完全には酸化されず、アルミニウムが残留する現象を見いだした。この残留アルミニウムは、基板に垂直で細長い構造をしているので、ワイヤグリッド型の偏光子として機能する。陽極酸化されたアルミナを基板から剥離し、プリズムで挟むことにより、大口径の偏光子を実現することが可能となった。ただ、挿入損失が1dB程度なので、更に低損失化に向けて酸化条件を改善している。 2。ポアへのUV硬化樹脂封入によるY分岐の製作 陽極酸化されたアルミナ膜には多数のポアが存在する。このポアにアルミナの屈折率より大きな屈折率を持つ誘電体を封入することにより、簡単にコアークラッド構造をもつ薄膜導波路を製作することが可能である。Y型を形成するマスクを用い、UV硬化樹脂を封入し、多モードY分岐をアルミナ薄膜上に製作した。十分特性の良い分岐回路を製作できることが判った。 3。ポアへの液晶封入 ポアへ浸析法を用い液晶を封入し、光スイッチの可能性について検討した。
|