本研究では、筆者らが提案している複合ダイアフラム超音波トランスジューサの作製プロセスを確立すると共に、このデバイスを同一基板上に多数集積化することにより高空間分解能2次元超音波トランスジューサアレイを試作し、マイクロマシン用超音波イメージセンサを実現することを目的とした。 まず、複合ダイアフラムの作製プロセスについて検討した。犠牲層エッチングと呼ばれるマイクロマシニング技術を適用することにより、同一基板上に多数の複合圧電ダイアフラムを作製することに成功した。また、複合ダイフラムに対して新たに極薄いシリコン層を付加することにより、等価的に歪が減少し、より薄く、大面積なダイアフラムを実現できることを明らかにした。さらに、犠牲層エッチングを最終工程とするプロセスを完成させた。これにより、1.3μmと非常に薄い膜厚でダイアフラムが作製可能となった。このプロセスを利用して、ガラス基板表面に複合圧電共振子を作製したところ、基本共振周波数777MHzにおいてQが約303という優れた特性のものが実現できた。 また、この複合ダイアフラム構造により励振される高周波超音波を利用することにより、超音波の伝搬媒体である液体に流れが生じる、いわゆる“超音波流動"が高効率に生じることを見いだした。これは、このトランスジューサが極めて高い周波数で動作し、しかも小型で高効率であるために、非常に狭い領域に超音波のエネルギーが集中できることによる。理論的検討により高周波化と共に超音波流動の効率が向上することを明らかにすると共に、実験的にも40mW程度の超音波入力で約5mmにも及ぶ液面の浮上が得られた。そして、この現象を利用した液体用マイクロポンプやマイクロマニピュレータを提案した。これは、マイクロマシンやマイクロセンサ等への応用が考えられる。 なお、上述のプロセスを利用することにより、複合ダイアフラム超音波トランスジューサの作製に成功しているが、歪のためにあまり良好な特性が得られていない。今後、プロセスの再検討により特性改善を図る予定である。
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