研究概要 |
本研究の個々の課題のうちで平成6年度以前から研究を進めていたものの中には、具体的な成果がまとまったものがいくつかある。特に、一般通信路の符号化理論については、「情報スペクトラム」「確率的下極限」等の新しい数学的概念を導入することによって、永年の未解決問題に理論的解答が与えられた(IEEE Trans.Inform.Theory,vol.IT-40,1994)。また、確率的ネットワークシステムの学習問題についても、これまで現実的データに適用されることのほとんどなかったボルツマンマシンを用いて、天候の地理的相関のモデル化が試みられた(電子情報通信学会論文誌D-II,vol.J77-D-II,pp.1169-1172,1994)。さらに、一般通信路の符号化や量子状態を用いた情報伝送に関して得られた新たな理論的成果について、国際学会(1994 IEEE International Symposium on Information Theory)において発表を行なった。一方、不確定性を持った情報源の符号化、確率的ネットワークの動作の高速化、量子状態を利用した暗号系等について、新しい知見を得るために理論および計算機シミュレーションに基づいたいくつかの試みが成されており、その一部については国内の学会(情報理論とその応用シンポジウム)で発表を行なった。 今後は、こうした成果を総合的な視点で捉え、不確定性を持ったネットワークシステムにおける情報伝送問題に関する統一的知見にまとめあげていきたいと考えている。
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