研究概要 |
1.通信路符号化問題に関して従来の研究で仮定されてきた無記憶性や定常性などの数学的条件を一切排したきわめて一般的な通信路に対し、符号化定理および強逆定理を証明することに成功した。結果自体の重要性もさることながら、その定式化および証明を通して、「情報スペクトル」「確率的上下極限」などの新しい数学的概念の可能性を示したという点にも大きな意義があったと考えられる。(IEEE Trans.Inform.Theory,40.pp.1147-1157.) 2.互いに相関を持った二つの情報源X,Yの確率構造が未知パラメータθを含んだ形でモデル化されているとする。X,Yから生起したデータ列を各々指定された通信レート制限のもとで伝送するという状況において、符号化と推定法を最適化した場合の推定精度の限界を求めよ、という「多端子推定問題」をある条件の下で解くことに成功した。これは、シャノン情報量とフィッシャー情報量、ユニバーサル符号化と最尤推定など、情報理論と統計学における様々な概念をつなげ、融合させる一つの試みである。(IEEE Trans.Inform.Theory,41,pp.1802-1833.) 3.その他、情報理論、確率的ネットワークシステム、量子情報理論等のいくつかのテーマについて研究を進め、論文誌および国際学会において発表を行った。
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