先ずスペクトル拡散通信方式については、搬送波周波数偏差に強いM進直交通信方式について研究を行なった。搬送周波数偏差が存在する場合、送信信号出力が減少し、スプリアス成分が非送信信号出力として現われる。この成分に対抗するためには、復調器での乗算課程後の周波数スペクトルが1)十分に拡散している、2)特定の帯域にピークを持たず、3)低い電力密度を持つこと、が重要であることがわかった。そしてこのような直交符号として、心行列がM系列で構成される巡回性H行列が適していることがわかった。そしてこの信号を用い、この信号に適した復調器を用いると、搬送周波数偏差に強いシステムが構成されることがわかった。 自己検査性検査回路の設計については、通信、信号処理、ディジタル論理回路構成等に多用される、アダマ-る符号の自己検査性検査回路の設計法を研究した。この符号は符号長に比較してその符号語数が極端に少なく、従来の設計手法では検査回路の設計が行なえなかった。研究の結果p=8m+3という形の素数を次数として持つアダマ-ル符号の場合、差集合の性質を用いて設計が行なえることを明らかにした。 最後にLSIテストにおいてはテスト入力としてランダム性の強い入力が大変重要になる。そこで、二次元のM平面から得られる系列をテスト入力として用いる研究を行なった。この系列について種々のランダム性のテストを行なうと、大変良好な結果が得られ、テスト系列として、一次元M系列の部分系列より優れたものになることが明らかになった。
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