研究概要 |
任意の1点代数曲線符号について、Feng-Rao設計距離までの完全な高速限界距離復号アルゴリズムを確立した。符号長をnとすると、代数曲線符号の復号法として最も基本的なFeng-Raoアルゴリズムの時間計算量がn^3であるのに対し、本手法のそれはHermite曲線符号の場合n7/3であり、一般の空間曲線符号でもn^3より小さいことが示される。この効率は現在までに知られている中で最良のものである。これらの成果の一部は、平成6年6月、IEEE Int.Symp.Inform.Theory、同年7月、IEEE Int.Workshop Inform.Theory、および、国内の研究会において口頭発表した。その主要な内容は、一部がFinite Fields and Applications,Vol.1,(1995)に掲載出版され、近々発行予定のIEEE Trans.Inform.Theoryの代数幾何符号特集号に掲載される。なお、理論の詳細は大学紀要論文として出版した。これらの理論的研究と並行しつつ、本高速復号法を計算機上にソフトウエアとして実現し、符号の具体例に適用して、その実際的な性能を調べるための実験を行った。2次元Hermite曲線符号とその3次元拡大曲線符号を対象とし、多数の誤りパターンについてシミュレーションを実行した。これらの実験結果は、計算量の基本単位である有限体演算(加減乗除)の回数、計算機上での実際の計算時間の両者とも、理論的計算量に極めて近い傾向を示しており、理論の正しさの傍証を与えるだけでなく、将来の実用化に際しての有効な指針となるものと考えられる。また、場合によって、本手法が設計限界を越える訂正能力をもつことが確認され、今後の理論的な研究への示唆を得ることができた。一方、本研究課題を含むより広い代数幾何符号一般についての知見をまとめ、応用数理Vol.4(1994)に発表した。なお、本研究の発展的テーマとして、本復号法のハードウエア実現のための並列処理アーキテクチャ、および、誤りと消失の両者を訂正するための高速復号法についての研究を進めつつある。これらの研究の一部は、平成7年7月、AAECC-11、同年9月、IEEE Int.Symp.Inform.Theory、および、国内の研究会で口頭発表した。
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