本研究で得た新たな知見、顕著な成果を先ず箇条書きにして纏めることにする。 平成6年度 (1)開放形および遮蔽形平面回路線路における超短パルス歪みのFDTD法での解析結果を示し、初めて漏洩現象による波形歪み、特に遮蔽形線路における波形歪みの特徴とその発生メカニズムを解明した。(2)ほとんどの平面回路線路では高周波域で基本伝搬モードと基本漏洩モードとが同時に伝搬し得ることを発見、数値解析および実験の両面からこの現象を立証した。 平成7年度 (1)同時伝搬現象を呈している線路に超短パルスを具体的に励振した場合、一定距離伝搬後にはパルス尾部に特徴的な減衰振動的歪みが現れることを見い出した。(2)このような歪みの原因となる同時伝搬現象が発生するか否かは物理的には意味を持たづ、ただ数学的のみに存在する一つの実根の線路構造に対する振舞いに依存しており、ほとんどの平面回路線路に共通することを発見した。 平成8年度 (1)同時伝搬現象を呈する平面回路での超短パルスの波形歪みの特徴はパルス尾部に現れる正弦波状の減衰振動的歪みであって、この歪みは時間遅れにともなってより高い周波成分から成っている一種のチャープ波形になることを見い出した。(2)パルスのスペクトルがミリ波以上の周波数帯にまで広がると、複数の漏洩波間に新しい形のスペクトルギャップが発生することを発見、またこの現象によって引き起こされるパルス波形歪みについても検討を始めた。 以上を纏めると、本研究目的であった超短パルス波形歪みの研究は、波形歪みの直接の原因を初めて明らかにできたことと新たな歪みの原因になる新しい波動現象を発見できたことでその目的を一応達成できた。さらに検討すべき課題も新しく生まれたが、研究実施はほぼ各年度に予定した計画で進行した。
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