本学衛星通信研究施設内のCS系実験局において、過去8年間にわたってほぼ連続的に記録された通信衛星CS-3ビ-コン波(19.45GHz)の、降雨時における減衰、及び交差偏波識別度(XPD)劣化の測定データを用い、それらの累積確率や秒単位における変動特性の解析を詳しく行った。この様なKa帯電波を用いた衛星回線は、今後需要が高まると考えられるが、未だに各地の測定データが少ないため降雨時の減衰量等は、実測値に基づくよりもむしろ既に多く得られているKu帯での減衰量から推定されるのが普通であり、本研究においてもKu帯放送衛星(BS)電波の減衰量と降雨事象毎に比較検討を行った。この結果両者の周波数間の減衰比は、雨滴粒径分布の影響を大きく受けることが明かとなった。このことは雨滴粒径分布の地上における直接測定、及びこれらが主偏波(右旋)に対する交差偏波(左旋)成分の相対位相差に与える効果の差異からも確認された。そして、受信側で移相器によるXPD劣化補償を行った場合に現れる影響の評価を行い、上記の雨滴粒径分布によってXPD劣化の補償改善度は2〜10dB程度の値の間で変動することが示された。この値は、降雨の種類(雷雨、霧雨等)にも深い関係があり、かなり大きな季節的依存性のあることが、過去8年間のデータから示された。一般に、同じ降雨強度に対しても小粒の雨の多い6〜7月の梅雨季には比較的XPD劣化補償の改善度が高く(〜10dB)、逆に大津部の雨の多い8月あたりは改善度が悪い(2〜5dB)。また9〜10月の秋雨季はこれらの中間の標準的な雨滴粒径分布に対する改善度(5〜10dB)を示すことが分かった。現在さらに、発雷時の交差偏波識別度と交差偏波位相の秒単位の急激な変動について詳しく検討中であり、今後発雷位置と発雷時刻との関係がより明らかになるものと期待される。
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