研究概要 |
平成7年度は,ファジィ回帰分析およびファジィレベルスライス処理法の有効性の確認と,得られた水質汚濁分布図と風送流に基づく流動数値計算結果との比較検討を行った。本年度の成果の要点は次のようになる。 1.ファジィ単回帰分析では回帰モデルを得ることができなかったケースについて,ファジィ重回帰モデルを提案し分析を試みた。その結果,pH,DO,COD等に関しても提案モデルを採用することによって解を得ることができた。従って,ファジィ単回帰および重回帰モデルを併用することにより,解析可能な水質項目の範囲が拡張されることが明らかになった。 2.衛星データを用いてファジィ回帰分析およびファジィレベルスライス処理法による水質の可能性推定分布図を作成した。従来の分析法およびレベルスライス処理を用いた場合,2値的な判別結果のみしか得ることができなかった。これに対して,ファジィレベルスライス処理法では10段階以上の判別が可能であり,中間汚濁レベルを含む詳細な水質分布図を得ることができた。 3.1984年,1986年および1992年に取得した衛星データについてファジィ回帰分析およびファジィレベルスライス処理を試みた結果,いずれの年度のデータを用いた場合でも解を得ることができ,詳細な水質分布図を作成することができた。この結果から,本研究で開発したアルゴリズムの汎用性と有効性が明らかとなった。 4.風送流に基づく湖流の時系列変化を把握するため,有限要素法を用いた数値解析アルゴリズムを開発した。その結果,八郎湖では風による湖水の移動が主であり,汚濁物質が貯まりやすい場所の流動が少ないことなどが明らかとなった。さらに,水質の可能性分布図との対応を調べた結果,流れが淀む地点の水質の汚濁が激しいなど,両者は良好に対応していることが確認された。衛星データの入手が困難なケースについて,数値解析法を用いることによって水質状況の予測が可能であることを明らかにした。
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