本研究で得られた成果の概要をまとめると次のようになる。 1.従来の統計解析法では解析の困難なデータに関しても、ファジィ統計解析法を用いると解析は可能となるケースが多く、水質解析を行う上でファジィ統計解析法は優れた技術であることを明らかにした。また、ファジィ単回帰と重回帰モデルを併用することにより、解析可能な水質項目の多くなることが認められた。なお、ファジィ統計解析法では専門家の知識を解析プロセスに導入し、分析を行うことが可能である。 2.従来不可能であった異常値の検出を、目的関数に着目することによって自動的に検出することが可能であることを明らかにした。 3.水質分布図を作成する手法としてファジィレベルスライス処理法を考案した。ファジィ処理法によって作成された可能性推定分布図は水質の実測データから予測される汚濁状況と符合し、さらに水質観測の専門家の知識とも良好な一致を見ることができた。また、従来のスライス処理法では2値的な判別結果のみしか得られないのに対して、ファジィレベルスライス処理法では10段階以上の判別が可能であり、中間汚濁レベルを含む詳細な水質分布図を作成することができる。 4.数年にわたり取得した衛星データについてファジィ回帰分析法とファジィレベルスライス処理を試みた結果、各年度について有用な解が得られ、詳細な可能性水質分布図を作成することができた。この結果から本研究で開発したアルゴリズムの汎用性と有効性が明らかとなった。 5.吹送流に基づく湖流の時系列変化を把握するため、有限要素法を用いた数値解析アルゴリズムを開発し、検討を加えた。八郎湖では風による湖流の移動が主であり、汚濁物質の溜まりやすい場所の流動は少ないこと等の知見が得られた。また、得られた潮流の時系列変化は水質の可能性分布図の状況と、良好な対応が見られた。
|