本研究で得られた成果は以下通りである。 1.機能仕様の作成 従来のパーソナルコンピュータ上で動作させるために簡略化していたオブジェクト指向型交通流シミュレータの機能を再検討し、機能の拡張および規模の拡大に伴う新たな仕様を作成した。同時に作業環境を移行することにより、速度面で10-50倍以上の性能アップを実現した。 2.構築と機能試験 作成された機能仕様に基づきシミュレータ本体の構築を行った。主な作業は仕様をみたすクラスライブラリを構築し、このクラスライブラリが、要求された通りの機能をもつことを確かめると同時に速度についても性能の検査を行った。 3.応用 構築されたシミュレータを用いて、現在開発が進められている情報提供システムや走行誘導・交通管制システムを対象とする、動的情報を含む交通流シミュレーションをいくつか実行した。 4.評価 上記3.で行ったシミュレーション例について、その結果はもちろんのこと、その結果を得るまでに要した労力、すなわち作成に要した時間やその手間が、従来の個々の事例に対してシミュレータを作成・実行する場合に比べて少ないことを確かめた。その利点を享受する代償として問題となるオブジェクト指向型シミュレータの実行速度面での調査もあわせて行い、十分実用的な速度で動作することを検証した。最後に、両者を総合して本研究で構築されるオブジェクト指向型シミュレータの評価を行い、その実用性および有効性を確認した。
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