研究概要 |
本年度は,この研究課題に関連して従来から行ってきた成果をふまえて,グラフの最大独立集合問題を遺伝的アルゴリズム(以下GAと書く)を用いて解く手法についてさまざまな実験を試みた。その結果得られた知見は次の通りである。 1.最大独立集合問題へ適用する際のコーディング法は,本研究で従来から用いてきた置換による符号化と復号化における貪欲算法(permutation encoding and greedy decoding)である。 2.グラフの独立集合は,その補グラフのクリークに対応する。従って,最大独立集合を求めるアルゴリズムは,補グラフを作る前処理を施せば,最大クリークを求めるアルゴリズムになる。最大クリーク問題に関しては,DIMACSベンチマークと呼ばれている66個のグラフがあり,最大クリーク問題のためのアルゴリズムの性能評価に利用されている。66個のDIMACSベンチマークを対象として実験を行った結果,66個のグラフのうち54個は最適解が知られているが,そのうちの36個についてはその最適解を得ることができた。また,最適解が未知の12個のグラフのうち4個については,現在のところ知られている最適解の下限値と同じ解が得られた。さらに他の2個については,下限値よりも大きな値の解を見つけることができた。 3.上記の結果を,最近提案された最大クリーク問題に対する二つの解法(一方はGAを用いており,もう一つはGAを用いないヒューリスティック算法)と比較すると,解の良さおよび演算時間の点で,数個の例外を除いて我々の方が優っている。これらの結果からも,我々の符号化による方法の有効性が立証されたということができる。
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