送信波形の制御により信号処理機能を変更できるという新しい超音波センサの設計理論の確立を目指して研究を進めた。以下に今年度の研究の経過を示す。 1.現有のデータ収集システムに、コンピュータで発生した波形データを高速のアナログ波形として送信できる任意波形発生装置を組み込んだ。これいより、送信波形により信号処理機能を制御する実験が可能になった。 2.センサの指向特性を変更する手法として、時間逆転波形を使用する方法を提案した。この方法では、超音波センサの出力波形の時間逆転波形を送信する。再び得られた超音波センサの出力波形をパルス圧縮処理すると、鋭いピークを持つパルス波形が得られる。このピークでの振幅と位相から超音波を反射する対象の状態が求まる。 数値シミュレーションおよび試作装置による実験を行った。その結果、以下の3点が確認できた。 (1)目的とする対象からの反射波形を鋭いパルス波として出力できる。 (2)複数の対象のうち、最も大きなレベルの超音波を反射しているものを選択できる。 (3)しかし、注目点以外からの不要な反射波に対する感度の相対値はこの技術を実用できる基準と考えられる-30dBを上回った。この問題を解決することが今後の課題となる。具体的な方法としては、アレイの移動、超音波センサの空間的重み関数の動的な変更などが考えられ、現在検討している。 3.高分子薄膜上に2値の符号に従って設計したパターン電極を形成し、波面を符号化する超音波アレイセンサを作製した。これを広い周波数帯域のパルスで駆動し、特性を評価したところ、水中の距離30mmで径3mmMの対象からの反射波を検出できた。
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