現代制御理論の反省の上にたって構築されたロバスト制御理論の中核としてH_∞制御が近年盛んに応用れている。しかし、H_∞制御理論適用のための前提条件はしばしば満たされず、応用時に大きな障害となっている。これは 1.G_<12>(s)、G_<21>(s)の零点条件が満たされない 2.D_<12>、D_<21>のランク条件が満たされない でまとめられる。第1項が問題になる典型例としてサーボ問題があり、第1、2項が問題になる場合としてプラントの入出力点の配置の不揃い等がある。 本研究はまず不安定重みを導入してロバストサーボ系を構成する問題を取りあげ、色々な角度から検討た。すなわち、 a.実閉ループ系が安定である場合を実質安定と定義し、実質安定を確保し、かつ、制御器が内部モデを持つための十分条件を与え、これらの条件下でH_∞制御器を導出した。 b.次に制御器が必ずしも内部モデルを持たない場合にもH_∞制御問題が解けることを示し、その解をいた。 c.実質安定で、且つ、評価伝達関数が安定である場合を改めて総合安定と定義し、総合安定が達成さる系の構造を調べた。 また、第2、3項の問題に対応して以下の結果を得た。すなわち、 d.D_<12>、D_<21>がフルランクではあるが、冗長度を持つ場合のH_∞制御、H_2制御に解を与えた。 e.これらがフルランクでない場合について、デスクリプタ形式を導入し、スペルトル分解問題を解い後、H_2制御とH_∞制御問題に対する解を与えた。 a.〜c.の成果はH_∞サーボ理論をさらに展開していくため、d.〜e.は、一般の非標準H_∞制御、H_2制御展開していくため基礎となるとともに、産業応用の場面でも有効に利用されつつある。
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