研究概要 |
本研究ではニューラルネットワークを用いた音響診断による破壊・故障予知の高精度化と信頼性向上を目指すことを目的としている.具体的には,(1)稼働中の回転機の音響診断に対しては1つのマイクロフォンによる複数台の空気圧縮機のバルブ異常診断の可能性を検討し,ネットワークの構成や学習則などの改良を行った.(2)衝撃音による欠陥検出に対しては時系列データを空間的に展開せずに扱うことのできるリカレント型ネットワークの適用を検討し,その有効性を評価した.得られた結果を回転機の異常診断と衝撃音による異常診断に分けて述べる. ◯回転機の異常診断 音響法の特質を生かして,1つのマイクロフォンで数台の空気圧縮機の複数のバルブをより高精度に診断できるようにネットワークの構成やその学習則に対して種々の検討を加えた.音響診断実験として,実際の工場での使用を模倣した種々の診断パラメータ(バルブ部を構成している弁板やスプリングに加わる人工欠陥の種類,マイクロフォンの位置や方向,ノイズの付加,吐出圧の変動,空気圧縮機やバルブの数など)の状態で空気圧縮機の稼働音の音響信号を収集した.そして、既に提案している特徴抽出と異常識別から構成されるハイブリッド・ネットワークの異常識別ネットワークをより異常診断に適したネットワークに変更して評価したところ,良好な結果が得られた. ◯衝撃音による異常診断 種々の診断条件(衝撃力,衝撃位置,マイク位置など)の下で,欠陥形状やその程度などをパラメータにして衝撃音を収集した.そして,衝撃音のような時系列信号の特徴を抽出するようなネットワーク・モデルの検討を行った.その結果,相互結合しているリカレント型ネットワークを適用することが効果的であった.
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