真っ直ぐな管(pipe)に音響エネルギーを入力すると、両端の開閉に応じて、ある周波数の整数倍の定在波が直ちに生じる。このことを利用して、管の一方の端に設置された音響センサに得られる音圧変動を利用して、管の長さをオンライン自動計測できる計測システムを開発した。具体的には管内部の音圧変動を、その三つの基本的な定在波成分(支配的なもの)の変動を表現できる形でダイナミクス表示し、これに音響センサ出力で表される観測方程式と組み合わせ、これにカルマンフィルタを適用するオンライン管長自動計測システムを研究、開発した。これにより、わずか0.3秒間程度の音圧データで、0〜±0.5%の高精度な計測結果が得られた。これについては、計測自動制御学会論文集に論文を投稿・掲載すると共に、これまでの知的計測研究に関わる研究成果のひとつとして、自著「計測システム工学」(朝倉書店)に載せた。 この方式はオンライン計測方式として、学術的にも、また応用的にも優れた方式であると思われるが、ダイナミクスおよび観測方程式に現れる雑音の分散に関するパラメータ値をある程度適切な値に調整しなければならない煩わしさが伴う。したがって現在、FFT(高速フリーエ変換)解析を利用したパターン認識手法を検討中である。これは、昨今計算機の計算スピードが年々飛躍的に増大しつつあり、この方式も管の長さオンライン自動計測方式として具体化できる可能性が大であることを考慮したからである。また、定在波だけでなく、音波を発信、反射波を受波する方式により管長測定だけでなく、管ネットワークの形状も自動識別できる方法の研究・開発も今後の課題としたい。
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