微地絡検出に関する具体的な磁界センサの開発を目指してきたが10^<-11>Tオーダーが限界であった。その主たる原因はやはり電子回路ノイズと磁性材料のヒステリシスループの揺らぎ(以下コアノイズという)の二つであることが確認された。これら二つの問題が解決されるならば更に高感度化が可能であり、いわゆる配電線に生ずるわずかな絶縁劣化に基づく微地絡状態の検出限界を上げることができ、予防技術の大幅な向上が望めるので当初の予定を変更し研究の主眼をこれらの基本的な問題に移した。まず、電子回路ノイズに関しては例えばICアンプの微小電圧増幅に対する線形性及び揺らぎ特性、ICアンプ自体の裸ゲイン特性を調べた。そのために恒温槽の開発を必要とした。これは数十ないし数百nVという極微小電圧の増幅に対しアンプ自体が増幅機能を有するかどうかを調べたことになる。一般にアンプはそれ自体の特性にもよるので必ずしも断定できないが、フィードバックをかけた形で用いる時このような微小電圧に対し増幅作用を持たずノイズに埋もれるため、フィードバックをかけること自体微小電圧の増幅に適さないことがわかったことは非常に大きな収穫である。即ちセンサの高感度化で問題になることの一つは増幅できる最小微小電圧をいかに小さくできるかであるが、フィードバックを施すことはこの電圧をはるかに大きくしなければならず、従来の増幅器に対する我々の一般的な常識を覆す結果が得られたことは今後のアンプ設計に対する考え方の革新を迫るものである。その上ICアンプ自体の性能評価をこのような微小電圧増幅という立場からできる手段を得た。次にコアノイズの問題であるがこれについては種々の磁性体を調べた結果、例えば鉄ニッケルベースのアモルファス、コバルトベースのアモルファス及びスーパーマロイそれぞれが特徴を有することがわかった。これはセンサコアの選択に対しコアを評価する一つの大きな手段を得たことを意味する。その上コアノイズを調べることはコアを磁気的な意味での均一性を評価し得る可能性を示唆するものであり、例えば鉄の純度を上げると共に結晶構造の一様性を高めていったときの特性を今後の研究テーマとして引き続いて解明を進める。
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