研究概要 |
本研究では,脳波情報処理に基づく,睡眠レベル,覚醒レベルを含めた生体活性レベルの識別同定手法を確立することを目的として,1.覚醒時脳波データ採取システムの開発,2.波形認識法における睡眠脳波ステージ自動判定システムの構築,3.生体活性レベルの特徴量としての非定常性の定量的抽出法に関する検討,等に関して研究を進め,以下の研究成果を得た. 1.覚醒時脳波データの採取システムの開発 パソコンによる覚醒時の脳波データ採取システムの開発を行ない,音刺激に対してボタン押しを義務づけた脳波計測システム,ならびに被験者に自発的に指を曲げるよう指示して,その指の動きと脳波を計測するシステムを構築した.計測データを解析した結果,音刺激に対する実験では,誘発電位と事象関連電位の分離手法の新たな開発が必要であることが,また,自発的に指を曲げさせる実験では,40Hz帯域の脳波において指を曲げる前0.1秒と0.27秒付近に振幅が最大になる現象が観測され,事象関連電位的情報が抽出できることが確認された. 2.波形認識法による睡眠脳波ステージ自動判定システムの構築 睡眠レベルでの新しい情報抽出法の妥当性を検討するために,その対比システムとして,専門医の視察判定手法をそのまま計算機で実現する,波形認識法による睡眠脳波ステージ自動判定のシステムを構築した.これは従来の国際睡眠生理学会が規定している基準と1995年に新たに日本睡眠学会が作成した「睡眠段階判定国際基準の自動判定のための補足定義および修正案」に準拠したシステムであり,専門医の視察判定に近い結果が得られることを確認した.今後,更に詳細な規則を付加して完全なものにして行くとともに,本研究で検討している生体活性レベルに関する新たな特徴抽出法を組み込んだシステムの構築へと発展させる予定である. 3.生体活性レベルの特徴量としての非定常性の定量的抽出法に関する検討 カオス解析,ウェーブレット解析を通して,非定常性の定量的抽出に関する各種検討を行っているが,現在のところ,きわだった特徴量の抽出までは至っておらず,今後更に検討を進めて行く予定である.
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