本研究は、NO_2代謝能力の高い植物と低い植物(1000倍の差がある)について、葉面電位信号に現れる有意差を大量のデータの収集と多変量解析などのデータ処理手法を駆使して把握すると共に、植物のNO_2代謝能力を葉面電位信号を頼りに調教・強化する手法の確立を目指したものである。 NO_2代謝能力と葉面電位の関係を精密に定量化するための測定系(他の条件を精密に一定に保ち、特定の刺激量(例えば、光、温度、湿度、CO_2、NO_2濃度など)だけを正確に変えて微弱な葉面電位信号に現れる反応量を測定できる。)を前年度(6年度)構築したが、7年度は、全系の耐ノイズ性、安定度などを検証し、葉面電位信号の基準電位の設定手法の確立とNO_2濃度測定系の精度を検証すると共に、多変量解析などのデータ処理手法を駆使して大量の葉面電位信号データを収集・解析し、NO_2代謝能力が低い植物(カポック)について同能力を統計的に調べ、それを強化する方法を検討した。 この結果、カポックは葉面の気孔からNO_2を吸収代謝する能力を有すること、NO_2吸収特性の時間的経過と葉面電位信号の時間的変化が良く一致すること、NO_2濃度が一定以上になると気孔を閉じて防御する特性を示すこと、同濃度を更に高めること、葉の付け根(葉柄)に離層が形成され、植物は自らの全ての葉を積極的に落葉させ、強度の防御特性を示すこと、このときの離層形成物質は落葉物質として知られるアブサイシン酸であるらしいこと、落葉した植物を通常の状態に戻すと再び葉が生えてくるが、この操作を繰り返すと、NO_2耐性がかなり改善されることなど多くの興味ある現象や特性が明らかになった。植物の大気汚染ガス耐性を強化・調教制御し、好窒素酸化物植物を実現するには、上記の防御免疫特性と学習・慣れの特性を融合させることが必要であり、それは可能であることが突き止められた。
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