研究概要 |
本研究は,高精度の3次元AE(アコウステック・エミション)位置標定と波形解析を応用し,岩質材料内の巨視的クラック近傍の破壊進行領域の形状・規模・微視的クラック密度及び方向分布の解析を行うと共に,これらの実験データを基礎とし,破壊進行領域のモデルを構成して数値解析を行い,妥当性を検証することを目的としている。 本年度は,AE事象率を基礎とする載荷方法(以後,AE事象率載荷法と呼ぶ)を応用し,最大荷重直前からひずみに軟化領域において,無筋コンクリート梁内に形成される破壊進行領域の長さと幅の解析,微視的クラック密度の及び方向分布の解析を行った。ひずみ軟化領域へのAE事象率載荷法の応用は,本研究において,初めて用いられたものである。この載荷法は,微視的及び巨視的クラックによる供試体内の内の損傷率をほぼ一定になるように荷重を増加または減少させて制御する方法で,この方法を用いれば,変位制御型の高剛性の試験機を用いなくても,通常の荷重制御型の万能試験機において,不安定なひずみ軟化領域の荷重-変位関係の計測が可能であるばかりではなく,AE計測装置からコンピュータの固定ディスクへのAE波の転送速度に合わせて,AE事象率を決定すれば,非常に多くのAE事象の解析が可能となる。上記のような載荷ほうし 用いて3点曲げ試験を行い,各供試体(150(高さ)×94(厚さ)×550(幅)mmごとに,約600個のAE事象を解析し,最大骨材粒径15mmと5mmのコンクリート供試体内の破壊進行領域の長さの平均値は,それぞれ50.5mm及び61.3mm,また,各供試体で位置標定された全AE源数を100%として,AE源の相対頻度が1%の点で判定した最大骨材粒径15mmと5mmのコンクリート供試体内の破壊進行領域の幅は,それぞれ70.5mmと57.0mmであった。AE波形解析で観察された微視的クラック面の方向は,荷重軸と平行なものが最も多く,微視的クラック面と食い違い変位ベクトルの方向の成す角が90度に近いものほど多く観察された。また,仮想クラックモデルと連続損傷理論を組み合わせて,巨視的クラック面の結合力と破壊進行領域の広がりを考慮した新しいモデルを用いて,上記の無筋コンクリート梁の解析を行った。このモデルで計算された載荷点変位は実験データより小さいが,破壊進行領域内の損傷度の相対的分布に関しては,良い一致が得られた。
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