研究概要 |
本研究は,高精度の3次元AE(アコーステック・エミッション)位置標定と波形解析を応用し,岩質材料内の巨視的クラック近傍の破壊進行領域の形状,規模,微視的クラック密度や方向分布及び供試体内部の巨視的クラック面の形状の解析を行うと共に,これらの実験データを基礎として,破壊進行領域のモデルを構成して数値解析を行い,妥当性を検討することを目的としている。 本年度も,昨年度に引き続きAE事象率を基礎として載荷速度を制御する方法(AE事象率載荷法)を応用し,AE波の計測と巨視的クラックに染料を浸透させながら,コンクリート及びモルタル供試体の3点曲げ試験を行い,これらの供試体内部の巨視的クラック先端近傍の破壊面の形状の観察や3次元位置標定を行った。この結果として,供試体内で完全に分離して巨視的クラックになった位置とAE発生源の先端との間の距離としての破壊進行領域は,コンクリート及びモルタル供試体で,それぞれ105mmと92mmであることが明らかになった。 また,AE波形解析から求められた微視的破壊面の方向分布を基礎として,異方性を考慮した連続損傷理論を定式化し,この理論と有限要素法を用いて破壊進行領域の数値解明モデルを構成し,コンクリート供試体の3点曲げ試験の数値解析を行い,実験結果との比較を行った。破壊進行領域の広がりは,実験結果と良く対応しているが,荷重一変位関係は,数値計算結果の方がかなり小さな値であり,今後,改善が必要とされる。
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