研究概要 |
本研究はPRC部材のプレストレス導入後から死荷重を受けた後の長期変形・ひび割れ幅のメカニズムとその解析方法を検討するものである。平成6、7年度にわたって行った研究成果の概要は以下の通りである。 1.重ね合わせの原理に基づき、コンクリートのクリープと収縮の影響を考慮したコンクリートの応力-ひずみ関係式を定式化した。これを用い、さらにコンクリートの全ひずみと鋼材ひずみの間に平面保持の仮定が成立するとして、変動応力化のひび割れ断面の、プレストレス直後から長期にわたる、クリープ解析に成功した。 2.ひび割れ断面のクリープ解析に加え、重ね合わせ法を用いて全断面のクリープ解析を行い、さらにテンションスティフニング効果を考慮することにより、変動荷重を受ける場合にも適用可能な変形解析方法を提示した。 3.テンションスティフニングの既往の代表的なモデル(ACI,CEB Manual、CEB Model Code 90(MC90))では、静的載荷時の場合、MC90はプレストレスが大きくなるにつれてテンションスティフニングを小さく評価する傾向にあり、長期においてはMC90、Manual,ACIの順に平均曲率を過大に評価する傾向が認められた。 4.以上の検討に基づいて、設計のための短期、長期ともに適用可能な有効曲げ剛性式を提案し、標準示方書に取り入れられた。 5.PRC部材のひび割れ幅の増加に及ぼす乾燥収縮の影響は持続載荷180日程度では乾燥収縮の寄与率は65〜80%であるが、載荷日数が長くなると寄与率が小さくなることを明らかにした。また、プレストレスを大きくすることによって引張鉄筋比を小さくすることはひび割れ間隔が広くなるが、ひび割れ幅の経時的な増加を助長することはなかった。さらに、長期変形に及ぼす乾燥収縮の影響はプレストレスが大きいものほど小さかった。
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