平成7年度は、6年度に引き続き相似形で寸法の異なるコンクリート引張供試体を用いて載荷試験を行い、載荷中に生じる破壊進行領域の性状とその時の荷重-開口変位曲線から得られる破壊に消費されたエネルギーとを調べる実験を行った。破壊進行領域を調べる方法としては、主として、X線造影撮影法を用いた。しかし、研究の途中で、この方法で得られた微細ひび割れ発生領域の外周に、微細ひび割れとは明瞭には判別できない雲状の領域が見られることがあり、破壊進行領域はX線造影撮影法で検出されるものよりもさらに広いのではないかと推定された。そこで、本年度の実験計画を少し変更して、AE三次元位置評定試験をX線造影撮影実験と併せて行うことにより、コンクリートの破壊進行領域の性状を調べた。結果の概要は次の通りである。 1)破壊進行領域の性状について:AEの発生は、荷重の初期から始まり、最大荷重のほぼ50%付近から急激に増加し、最大荷重を過ぎると増加が緩やかとなることが分かった。AE発生点は、ノッチの先端付近からノッチの長さ方向にある幅をもって進行し、AE発生領域を形成することが分かった。このAE発生領域の大きさは幅、長さともにX線造影撮影法で得られた結果よりもかなり大きいことが分かった。最大荷重時において、供試体寸法の比が1:2であるのに、AE発生領域幅の比は1:1.6であり、AE領域長さの比は1:3.2となった。また、同じ条件で、X線造影撮影による微細ひび割れ発生領域幅の比は1:1.6であり、その領域長さの比は1:4.7となった。 2)破壊エネルギーについて:最大荷重時までに破壊に消費されたエネルギーを検出された破壊進行領域の面積及び体積で除した破棄エネルギーの値は、部材寸法が異なってもほぼ一定である傾向が見られた。
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