本研究では地震時の応答性状や構造物の耐震性指標を目的関数あるいは制約条件とし、汎用性に優れた均質化法による形態最適化過程を通じて、耐震性能的に最適な構造形態を探求・創成することを目的とした。 昨年度は均質化法の概念を準用して位相を含めた形態最適化問題を、構造材料の最適配分問題に置き換える「材料の配分最適化手法」の開発改良を進めた。平成7年度の研究は、上述した動的最適化問題への手法拡張に先立ち、動的最適化問題に対する多様な数値解析事例を蓄積する必要性・重要性に基づくものである。すなわち、主体構造(主要な構造要素)の周辺空間における“最適な補強構造"の生成・抽出問題に、材料の配分最適化手法を適用し、この最適化手法の検討評価を試みた。得られた主要な研究成果を要約する。 1.最適配分された材料の「正規化した密度濃淡図」から、最適な補強構造に関する形状のみならず位相を含めた構造形態まで、視覚的に抽出可能となった。 2.事前設定した主体構造に応じて、主体構造をより有効に活用する方向にアーチ構造やケーブル構造を想起させる最適な補強構造が形成されことが明らかになった。 3.構造物の概念設計における構造形態の“たたき台"を過去の実績や経験によらず、この配分最適化手法のような「数理的方法」によって提案が可能となった。 今後は、この最適化手法を地震時の応答性状や耐震性指標を考慮しながら動的問題に拡張し、最終目標である耐震性能的に最適な構造形態の創成に関する研究を進めたい。
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