1.プレストレス木床版のたわみに及ぼすプレストレス力の影響を調べるために、室内模型実験を行った。実橋の設計で用いた、プレストレス力により木床版に作用させる圧縮応力4kgf/cm^2を基準とし、プレストレス力を変化させて圧縮応力を4kgf/cm^2の0.12、0.18、0.24、0.4、0.48、0.72、0.96、1.20、1.44倍として各ケース毎の曲げ試験を行った。設計で想定しているプレストレス力の損失は60%であるが、実験結果より、プレストレス力損失が60%の場合、たわみに及ぼす影響は10%程度であった。また、プレストレス力損失が90%の場合でも、たわみに及ぼす影響は約20%であり、木床版を構成する杉集成材に与える架設時圧縮応力は、4〜5kgf/cm^2で十分に直交異方性平板の挙動を示すことが明らかになった。2.集成材主桁と集成材床版パネルを鋼棒で合成させた合成格子桁の、70cm間隔で挿入したプレストレス鋼棒で緊張した床版を対象に、たわみに及ぼすプレストレス力の影響を調べるために、2辺が主桁上で25cm間隔で挿入された鋼棒を介して支持され、他の2辺が170cm間隔の鋼製横桁上で2本のφ10mmボルトで支持される場合の曲げ試験を行った。プレストレス力を変化させ、床版パネルに作用する圧縮応力を4kgf/cm^2の0.24、0.48、0.72、0.96、1.20倍として各ケース毎の曲げ試験を行った結果、圧縮応力が3kgf/cm^2以上の場合、実験値は4辺単純支持の直交異方性平板としての解析値より22%小さい値が得られた。プレストレス力損失が60%程度の場合、たわみに及ぼす影響は5%程度であった。また、プレストレス力損失が80%程度でも、たわみに及ぼす影響は12%程度であり、これより木床版を構成する杉集成材を用いた床版パネルに与える架設時圧縮応力は、3kgf/cm^2程度で十分に直交異方性平板としての挙動を示すことが明らかになった。また、横桁間隔を110cmとした場合も上記とほぼ等しい結果が得られた。
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