1.杉とから松の複合集成材ラミナを主構造材とした実橋のプレストレス木床版橋を対象として、架設時に与えたプレストレス鋼棒の緊張力の経時変化を2年間測定した結果、設計で想定しているプレストレス力の損失は60%であるが、実橋のプレストレス損失は、床版端部で15%、支間中央で5%であり大きな損失は見られなかった。これは、木材の含水率が架設時の平均11%から2年間で増減を繰り返しながらも13〜22%へ増加したことにより木材の体積が増加し、プレストレス力の大幅な低下が避けられたと考えられる。また、架設時から1年後、架設時と同じ15tfのトラックを用いて曲げ試験を行った結果、幅員中央に対して対称載荷の場合、載荷点で架設時のたわみより7〜14%小さな値が得られ、偏心載荷の場合6〜23%小さい値が得られた。これは、上記のように大きなプレストレス力損失が見られなかったためと考えられる。2.プレストレス木床版のたわみに及ぼすプレストレス力の影響を調べるために、室内模型実験を行った結果、プレストレス力損失が60%の場合、たわみに及ぼす影響は10%程度であった。また、プレストレス力損失が90%の場合でも、たわみに及ぼす影響は約20%であり、木床版を構成する杉集成材に与える架設時圧縮応力は、4〜5kgf/cm^2で十分に直交異方性平板の挙動を示すことが明らかになった。3.杉集成材主桁と杉集成材床版パネルを鋼棒で合成させた合成格子桁の、プレストレス鋼棒で緊張した床版を対象に、たわみに及ぼすプレストレス力の影響を調べるために室内模型実験を行った結果、床版パネルに作用する圧縮応力が3kgf/cm^2以上の場合、実験値は4辺単純支持の直交異方性平板としての解析値より22%小さい値が得られた。また、プレストレス力損失が設計値の60%程度の場合、たわみに及ぼす影響は5%程度であり、床版パネルに与える架設時圧縮応力は、3kgf/cm^2程度で十分であることが明らかになった。
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