研究概要 |
本研究は、都市内気流中の橋梁構造物に作用する風荷重特性を風洞実験ならびに数値解析の両面から検討を加えることを目的とするものである.本研究の成果の概要は以下のようである. 1.構造基本断面の空力特性評価に対するCFDの応用について CFDの中でも比較的簡便な離散渦法を用い,構造基本断面(矩形断面)の空気力,および後流の流速変動特性の再現を試みた.物体近傍の流れの解析精度を上げ,かつ流れの粘性を考慮するため,渦法と差分法それぞれの利点を生かした解析手法を適用し,解析を行った.解析結果に及ぼす数値粘性の影響が大きいため,これを抑える新たな手法を提案すると共に,その妥当性について断面辺長比1:2矩形断面のストローハル数(後流の流速変動特性を示す無次元数)がレイノルズ数によって変化する様を再現し,実験値との比較により検証した.さらに,物体の振動問題へ拡張し,振動中の非定常圧力,非定常空気力について解析を試み,準定常的な特性は非粘性解析である程度再現可能であるものの,非定常性が強い領域では流れの粘性を的確に導入する必要性が指摘された. 2.乱流中の橋梁構造物の動的空力特性について 強い乱れを含む都市内の気流による橋梁構造物の空力特性を調査するために,前縁,後縁形状を独立に変化させた断面を対象に,乱流の渦励振に及ぼす影響を風洞実験より検討した.その結果,矩形断面で乱流中で応答振幅が低減するメカニズムは,前縁剥離渦は乱れにより弱められることはなく,乱流による流れ場全体の微妙な変化が矩形断面の自己励起型渦励振では安定化効果という形で現れ,六角形桁断面の再付着型渦励振では逆に不安定化効果として現れること,さらにこの「微妙な変化」は乱流の高周波数成分による流れの連行作用であること等が明かとなった.
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