研究概要 |
厚み比2の筒状楕円柱体を構造本体とする水中橋梁が、海面下数十メートルの位置に設置されて一様な流速の潮流が作用する場合を想定し、これに離散渦法を適用することにより高レイノルズ数領域(R_e≧10^7)における流れ場を解析し、非定常流に対するブラジウスの公式を利用して構造本体に作用する流体力を算定した。 構造本体の迎え角αを0°,2°,4°および6°に変化させて時間的に変動する抗力係数C_Dと揚力係数C_Lの時間平均値C_D,C_Lを求めたところ、前者は迎え角に関係せずほぼ一定で、C_D【similar or equal】0.70であり、後者は迎え角にほぼ比例し、C_L【similar or equal】0.50α°の関係式が得られた。 さらに、揚力係数C_Lの時間的変動に周期性が認められることから、高速フーリェ変換を利用して求めた揚力係数のパワースペクトル密度関数は狭帯域特性を示すので、この極大値に対応する周波数より渦放出周波数を決定して、ストローハル数S_nを算出した。その結果、ストローハル数は迎え角に関係せずほぼ一定の値、S_n【similar or equal】0.35になった。 次いで、解析用構造モデルを作成し、バネ支承上の連続梁として自由振動解析を行ったところ、第一次の振動数は渦放出周波数の5倍程度になったが、同期現象発生の危険性の有無については、今後の検討課題であると考える。 最後に、厚み比2の楕円柱体の抗力係数とストローハル数に関してNACAにより発表された実験データを臨界レィノルズ数を越えて外挿し、離散渦法による計算結果と比較したところ、数値計算の妥当性を推測するに足る一致が見られた。従って、高レィノルズ数の領域において、鈍頭物体に作用する流体力を合理的に算定するという所期の目的は、ほぼ達成されたと考えられる。
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