橋梁の耐風性を数値流体解析を用いて把握するとき、問題となることは、実際の設計との連携が十分に確立されていないことである。よって、本研究の目的は、これまでの解析手法の研究成果を踏まえた上で、解析で得られた耐風設計上必要な結果を実際の耐風設計に即座に反映できる有効な手法を開発することにある。 本研究では、94年度は2次元問題に限定し、流速・圧力・橋梁断面に作用する力ならびに橋梁断面の振動応答を解析する数値流体解析のソフトウェアーの開発を行った。95年度以降は、3次元解析へ拡張することを試みた。これと並行し、以下の実際の橋梁断面や部材に本手法を適用し、有効性を確認した。 (1).大型斜張橋の並列ケーブルで発生しているウェーク・ギャロッピング現象への適用 斜張橋の並列ケーブルを2次元の近接する並列円柱複数構造物としてモデル化し、迎角と加振振幅をパラメータとして、静止した状態および後方円柱を強制加振した状態での並列円柱まわりの流れの解析とビジュアル化を行た。この結果から、わずかな迎角や振幅の変化により円柱間の流れの特性が変化し、これにより後方円柱の平均揚力係数と減衰率が大きく変化することを掴んだ。 (2).実橋梁断面での3次元解析 実際に施工された箱桁断面の風荷重の解析を、2次元、3次元の両者の解析を行い、3次元解析が、風洞実験結果と一致する結論を得た。これより、実構造の設計には、3次元解析が必要であることが分かった。 (3).耐風設計との連携 数値流体解析で得られた結果と実際の耐風設計に生かすことを試みた。耐風設計のための基本的なパラメータを正確に数値解析により評価するには、3次元数値解析が必要であることが分かった。ただし、概略設計段階では、加重が大きくはなるが2次元数値解析でも設計上のパラメータを決定するには実用に耐えうることが分かった。
|