疲労損傷の補修方法の一つにストップホール法がある。これは、疲労亀裂先端に円孔をあけ亀裂先端の応力集中を緩和することにより疲労強度の向上を計る方法である。また、このストップホールをボルトで締め付けることにより応力集中はさらに緩和され、補修効果は高いとされている。ここでは、この疲労亀裂先端に円孔をあけ、それをボルト締めする補修方法をボルト締めストップホール法と呼ぶ。本研究では、ボルト締めストップホール法により補修した疲労損傷部材の疲労強度、およびその評価方法を明らかにすることを目的として本年度は面内ガセット継手を対象とした以下の検討を行なった。 疲労損傷を受けていない溶接継手試験体、ストップホールで補修した試験体、さらにボルト締めした試験体の3種類の試験体を用意し、疲労試験を行なった。その結果、ボルト締め試験体の疲労強度は、ストップホール試験体と比べて60%程度高く、さらに残存断面が60%になっているにも関わらず未損傷試験体より疲労強度は高く、その差は長寿命域ほど顕著であることが明らかとなった。これらの試験体について、応力解析および疲労試験結果の再整理を行なうことにより、以下のような疲労強度評価式を導いた。Δσ_n^m・N=C{γ(α_0-1)}^m、ここでΔσ_nは公称応力範囲、Nは疲労寿命、Cとmは材料定数である。α_0はストップホールのみの応力集中係数であり、その値はこれまでに提案されている経験式等から求められる。γは応力緩和係数であり、種々の条件で応力解析を行なうことによりγ=1.00-0.0150(M^2/t)なる算定式を導いた。ここで、Mは円孔径、tは板厚である。この以上の疲労強度評価式の妥当性を試験結果との比較から確かめた。
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