研究概要 |
当初計画ではカラム側面にピエゾメータを取り付けて不飽和土中のサクション計測による水分量推定を考えていたが,溶質の移動にともなうピエゾメータ先端のガラスフィルターの腐食,ガラスフィルター内への溶質拡散,等の実験の精度上の問題が明らかになった。そこで,カラム側面でのサクション計測は断念し,カラム土中からの試料サンプリングによる含水比の直接計測を行った。当初計画(1)〜(3)に対する研究成果をまとめると次のようになる。 (1)一定温度環境下における水分移動特性の解明 カラム上端で加熱したとき,加熱しないときの水分移動にそれほど大きな違いはみられない。水分量の計測からこの結論は誘導され,液状水の形態での水分移動は温度環境にそれほど影響を受けないことがわかった(カラム長16.8cm)。 (2)定常温度場における溶質の移動特性の解明 溶質に塩化ナトリウム溶液(0.1mol/l)を用いてカラム下端からの溶液の吸い上げ実験を行った。カラム上端で加熱する場合,加熱しない場合を比較したところ,6時間後までは塩素イオン濃度にそれほど大きな差はみられなかったが,12時間後には,加熱した場合の上端カラムで高濃度の塩素イオンが検出された。(1)の結果から加熱の有無にかかわらず飽和度にそれほど大きな差がないことから溶質の分散係数の差は少ない。液状水ではなく,水蒸気の形態での移動が原因究明の鍵と考えられた。 (3)定常温度場における溶質移動と水分移動の関係 カラム内の温度と水分分布を計測してるので,定常状態での水分移動をPhiIip&Vriesモデルを用いて算定した。液状水の流速は加熱の影響を受けないのに対し,水蒸気移動が加熱の影響をたいへん強く受けることがわかった。溶質移動の媒体ではない水蒸気移動の速度が高くなると,なぜ溶質がカラム上端に高濃度で蓄積するのか,今のところ原因は不明である。
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