本研究の目的は、アスコン表層のひび割れ発生後に急増するわだち掘れ挙動に着目して、路盤あるいは路床の噴泥現象(ゆるみ領域の発生)という観点から、その解析手法を確立することである。この目的のために実施した各種試験及び解析の概要と得られた知見を以下に列記する。 1.試作した小型模型試験装置による繰返し平板載荷試験:試料としては、路盤材に粒度調整砕石、路床材にマサ土を、それぞれ採用した。両試料とも、水浸状態の載荷板沈下量は、載荷板巾、載荷圧及び載荷回数によって異なるが、湿潤状態の値を2〜4倍と上回った。この原因となる噴泥現象の発生(載荷板方向への細粒分の移動)とその発生領域(上部楕円形状から円形状へ移行)が路盤試料で確認された。 2.既存の繰返し三軸試験装置による材料特性化試験:水浸試料と湿潤試料の材料特性(復元及び残留変形特性)には顕著な差異は認められなかった。したがって、噴泥発生領域内の土要素状態は静的破壊に至った試料状態に対応するものと仮定して、その特性化を試みた(ゆる詰め試料の材料特性とほぼ同等)。 3.繰返し平板載荷試験結果の解析:前項の試験結果を入力して解析(反復有限要素法に基づく解析)した結果は、湿潤材料に関しては比較的良好であったが、水浸試験に関しては実験結果をかなり下回った。これは載荷板寸法が小さく不安定であること(繰返しCBR試験の同様な結果より類推)、特性化試験において静的破壊に至るまでの変位増分を無視していること等に起因するものと思われる。 4.試験舗装体のわだち掘れ解析:前項に示した不十分な解析結果にもかかわらず、試験舗装体のわだち掘れ挙動への上記解析法の適用は良好であった。これは現地舗装状態の複雑さを示唆するものである。
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