本研究の最終目標は南九州しらす地帯での斜面崩壊機構の解明である。そのために、不飽和土の三軸試験、不飽和土の熱伝達、浸透問題に関する数値力学モデルの確立、斜面安定解析の検討を行なっている。三軸試験では、温度の変化が不飽和状態での土の力学特性に及ぼす影響を調べるために鹿児島県大隅半島で採取したしらすを試料とし、セル水の温度が異なる条件での不飽和状態の供試体の排気・排水試験を行なった。得られた結果より、温度変化に伴う間隙水の粘性係数の変化がしらすの不飽和力学特性に影響を及ぼすことが明らかにされた。数値力学モデルの確立に関する研究では、不飽和状態での間隙流体の相変化を考慮した土の数値力学モデルを確立するためのコンピュータ・プログラムの開発を行なっている。すなわち、土粒子レベルでの熱力学的考察により、不飽和状態での土塊内の熱伝導を表現できる式を誘導し、それらの式を用いたコンピュータ・プログラムを作成し、コンピュータを用いた一次元熱伝導に関する数値実験を行なっている。斜面安定解析については、従来の手法の問題点を明らかにし、新しく数値的に斜面安定問題を解くために開発した手法との関連について考察を加えている。 次年度は三軸試験については含水比の影響を調べるための実験を予定している。相変化を考慮した数値力学モデルに関する研究ではモデルの二次元への拡張、対流に考慮したコンピュータ・プログラムの開発を予定している。最後に、それらの成果を斜面安定解析に適用するための手法の提案を行なう予定である。
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