本研究は最終目標は南九州しらす地帯での斜面崩壊機構の解明である。そのために、不飽和土の三軸試験、現地での地盤の温度計測、不飽和土の熱伝達・浸透問題に関する数値力学モデルの確立、斜面安定解析手法の開発を行なっている。 三軸試験においては、温度の変化が不飽和土の力学特性に及ぼす影響を調べるために鹿児島県大隅半島で採取したしらすを試料とし、セル水の温度を10°〜40°C、拘束圧を0.5〜1.5kgf/cm^2の範囲で変化させ、不飽和状態の供試体を用いた排気・排水試験を行なった。得られた結果より、温度変化に伴う間隙水の表面張力、粘性係数の変化がしらすの不飽和力学特性に影響を及ぼすことを明らかにした。 数値力学モデルの確立に関する研究では、不飽和状態での間隙流体の相変化を考慮した考察を土粒子レベルで行い、熱拡散率、熱伝導率、不飽和透水係数、透気係数を導き、日射による地盤の温度変化、水分保持特性の温度依存性等に関する数値実験、および、現地計測データとの比較を行っている。 斜面安定解析手法の開発については、土粒子間の粘着力に着目し、従来の斜面安定解析法の中で用いられている見かけの粘着力と表面張力に起因する真の粘着力との関連について考察を加えている。
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