土構造に立脚して水の浸透に伴う土中における重金属の挙動を解明する目的で、解析および実験的に検討した結果、次の事項が研究の成果として取りまとめることができる。 1.風化度の基準として用いた強熱減量と銅の吸着量とは、比例関係となる。つまり、強熱減量の大きい風化度の著しい試料ほど銅の吸着量が増大する。この事実は、和歌山県内の沿岸域の泥中の銅の分析データからも確認できた。 2.カラム溶出試験から得られた各段階の風化度に対する銅イオンの吸着等温線は、バッチ平衡試験の結果と同じ傾向を示した。この事実は、銅イオンの吸着特性に対し吸着理論による検討の正しさを示唆するものである。 3.X線マイクロアナライザーを用いて、風化度の異なる試料の銅イオンの吸着状態を分析した結果、風化度の大きい試料ほどミクロポア内に吸着することが確認できた。 4.乱した試料の他に乱さない試料の吸着等温線は、カラム試験から測定できる。そして後者の試料の場合でも風化度の大きい試料はBET型により、小さい試料はLangmuir型により解析できる。 5.拡散係数をカラム法および透過拡散法に基づいて測定し検討した結果、両手法とも拡散係数と銅イオンの濃度との関係は類似の傾向を示す。降雨浸透に伴なう銅イオンの移動に焦点を当てると、カラム法が透過拡散法に比較して有用と考えられる。 6.銅イオンの拡散状態を吸着を考えた物質の移流拡散式により解析した結果、吸着効果を評価する遅延係数により銅の濃度変化が支配される。そして、この係数も風化度と対応する。
|