これまでの研究の進展状況あるいは得られた成果を以下に列記する。 (1)波浪が氷板下へ進入する際に波高は大きく変化し、氷板下を進行する間は緩やかに減衰する。前者が波浪のエネルギーの一部が氷板の運動エネルギーに変換されたことに起因するのに対し、後者は摩擦等のエネルギー逸散が原因であり、異なったメカニズムによるものである。また、変化率及び減衰率はいずれも入射波の周期に依存する。 (2)開水域での波速は周期が短くなるにつれて遅くなるのに対し、氷板下ではある周期以下で再び増加する。 (3)氷板域の平均水位の変化は極めて小さく、実質的には無視し得る。 (4)弾性平板下での波動の3次近似解が誘導された。非線形性は波高及び波速の理論計算では顕著な影響を及ぼさないが、変形の形状の局所的に曲率に依存する破壊に対しては極めて重要であることが明らかとなった。また、氷板が破壊する条件が定式化された。 (5)上記の理論解析は波速の実験値とは良く一致しているが、波高変化に関しては定量的には不充分であり、今後の検討が必要である。
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