本年度の研究成果を以下に列記する。 1)波浪による氷板の破壊 連続氷板が波浪によっ破壊される場合の破壊幅は氷板下での波長の1/4から1/2の範囲に限定されることが明らかとなった。このような破壊幅の波長依存性が現地海域で観測される規則的な破壊パターンをもたらす。破壊の発生条件は、氷板下での波高及び波長と氷板の厚さ、弾性係数、曲げ強度に依存していることが明らかとなった。氷板の変形を正弦波で表現し、弾性曲げ変形の線形理論から誘導される氷板破壊条件を提案した。これと実験値と比較したところ、極めて良く一致しており、氷板破壊の解析に対する弾性理論の適用が実証された。 2)不規則波の氷板の干渉 不規則波が氷板下へ進入する際の波高変化及び氷板下でのエネルギー減衰をスペクトル解析によって検討した結果、不規則波の各周波数成分の変化特性は氷厚と周波数に依存することが明らかとなった。この変化特性は、同一の周波数を有する規則波の変化特性とほぼ同一であり、氷板による不規則波の変化をそこに含まれる周波数成分の変化の線形和として表現できることが明らかとなった。 3)半閉鎖水域の結氷予測 港湾あるいは湾などの半閉鎖水域での全面結氷を予測するモデルを提案した。このモデルは、氷板の発生及び発達と風による氷板破壊の可能性の検討が組み込まれた閉鎖水域での全面結氷予測モデルを改良したものであり、これに波浪による曲げ破壊の可能性の検討が加えられている。港湾などの小規模水域では湾口から進入する波浪の影響を、また湾などの大規模水域ではそこで発生する風波の影響が考慮されている。このモデルにより、気象及び海象水域の全面結氷が予測できる。
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