平成6年12月17日〜23日天塩川水系仁宇布川で錨氷に関する現地観測を実施し、錨氷の発生条件、形状、密度、含有土砂量、気温、水温などの測定を行った。また岩手県丹藤川支川で錨氷の発生状況を調べた。 錨氷は河床材料に流下するる数ミリの晶氷が付着して成長する場合と流下が直接河床材料に凍着する場合があった。仁宇布川では低温が数日連続し錨氷が成長して、石を包み込むように1m以上の大きさになる場合、河床全体に絨毯を敷いた様に広がる場合などいろいろの形態が観測された。 また錨氷の発生は夜間であり、日射により水温が上昇する日中には、河床材料から離れて流下する場合が多く、多量の氷塊の流下は、下流域での氷板形成の大きな要因となることは明らである。日中の気温が十分低い場合は、錨氷の剥離・流下は生じない。また、急流部の錨氷の密度が緩流部に比べて大きいことも観測された。錨氷内の含有土砂量は数%のオーダーで結氷期初期の土砂輸送に果たす役割は小さいと思われるが、含有土砂量は時間の経過と共に浮遊砂を取り込んで増加する傾向が見られた。また、錨氷の浮力によるものと推定される数センチの小石の輸送が観察された。錨氷の発生量については気温との相関性が認められ、気温-10度が発生の上限であることが示された。 仁宇布川では錨氷の発生に不可欠な晶氷の発生について検討するため水温観測が同時に実施され、岩手大学の低温室内では晶氷の発生条件に関する基礎実験が行われた。これらの結果より、冬期の河川水温の変動要因、水温の過冷却の発生条件、晶氷の発生条件、氷板の持つ保温効果等に関する知見が得られた。
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