研究概要 |
本年度は長良川下流域の自然ワンドを対象に,生態系調査と熱環境調査を行った.対象としたワンドは、長良川下流部の距離標15.6kmの地点にある。長良川河口堰運用前は干満の影響を受ける汽水域であったが現在は淡水域へと変化していると考えられる。水域の長さは約800mの細長い形状のワンドで、入口部の平均水深が約1m、中央部で約1.8m、奥部で約80cmである。調査の結果,以下の知見を得た. (1)鳥類調査 文献^<1)>によると同じ季節に行われたH2.9.16の調査で,長良川下流域4ケ 所総延長2km区間で30種の鳥が確認されている.今回の調査ではその3分の1がワンドで確認できた。対象ワンドは鳥類にとって重要な生息場所であることが確認できた。 (2)底生動物と底質調査 クロベンケイガニ類の個体数密度の結果を1992年調査の結果^<1)>と比較すると,ワンドのカニ類個体数密度は増加していた.これは、長良川河口堰の運用で水位が上昇し,ワンドの陸地部分が減少しているので,一時的に避難しているのではないかと推測した.継続的な調査が必要である。ワンド周辺の底質について、7ケ 所から土のサンプリングを行い、密度、粒径分布などについて調査した。ワンド水域の底質の平均粒径は,入口から奥部に向かうにつれ小さくなっている。土中微生物の活動状態は,木の根や埴生の豊富なところ程活発であることがわかったが,土壌pHと微生物の活発度,およびカニ類の生息場所に関しては特に関係は見られなかった. (3)熱環境調査 秋期に2週間,冬季に4週間の水温変化をワンド水域3地点,5水深で行った.本川の水温に比べてワンドの水温は気温の影響を強く受け,湖沼や貯水池の水温環境と似た特性を示した. 参考文献 1)長良川下流域生物相調査団編:長良川下流域生物相調査報告書
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