研究概要 |
当初の研究計画では、単純な形状のモデルを用いて汽水湖の海水交換特性に関する基礎実験を行なった後に具体的な汽水湖を対象とした実験を行なう予定であった。しかしながら、本研究では実現象の把握が最も重要であるとの観点から、実際の汽水湖(京都府北部の久美浜湾)を対象とした模型実験の現地観測から海水交換特性を検討することとした。研究実績の概要を以下に示す。 汽水湖における海水交換は、地形、潮汐、海への開口状態および流入河川条件などによって影響されるため、その機構は非常に複雑である。本研究では、京都府北部の久美浜湾を対象とし、水理模型実験および現地観測の結果を用いて汽水湖の海水交換特性について検討した。既設の平面水槽(5m×10m)内に、水平縮尺1/(1,000)・鉛直縮尺1/(200)の久美浜湾水理模型を設置し、流れの可視化法を用いて潮流の流動特性に関する実験を行なった。その結果、環流の発生位置・スケールなど湾内における潮流の挙動が明らかになるとともに、海水交換が卓越する領域とそうでない領域の区分などの海水交換特性に関する知見が得られ、従来の観測結果を説明する基礎資料が得られた。また、これらの知見に基づいた現地のおける予備観測を実施し、有用な資料を得た。 以上のように、実際の汽水湖を対象とした水理模型実験および現地における予備観測を実施し、有用な資料が得られたことは評価される。また、現象の把握に重点をおいて行なった水理模型実験から、汽水湖の海水交換特性を検討するためには潮流によって誘起される還流の位置やスケールを知る必要のあることが指摘された。これらの結果において、現地観測結果と実験結果との比較より、実験においても風の影響を考慮する必要性のあること等の研究上の課題が示された。
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