研究概要 |
この研究は実験水槽での模型実験を通じて離岸堤ブロックの安定性の信頼性解析を可能ならしめるための基礎的な検討を行ったものである.研究は1/30のスロープ上に設置した法面勾配4/3の堤体(堤脚水深27.5cm,堤高40cm)を用いて行った.堤体は20〜27gの砕石(比重2.7)を積み上げてつくった.この堤体に規則波を1ケースあたり15〜40分作用させ斜面の変形を水槽側面に設置したビデオカメラで記録した.実験に用いた波は予備実験を参考にして周期1.0sと1.4sの2種類,波高は5〜20cmの範囲でともに8種類変えた.いくつかのケースについては同じ条件で繰り返し実験を行い法面変形の不確定性を測定した.上記の砕石はハドソン式によればほぼ7cmの波に対して安定である.実験の結果,静水面を境にしてそれより上では斜面がほぼsinで近似出来る凹型に浸食され,下では斜面とほぼ平行に体積し,両者の面積はほぼ等しくなった.法面の浸食の大きさを初期状態からの法面の変形面積Sで評価すると,Sは作用した波の数の増加とともに大きくなるがその割合は徐々に減少し,それ以上変形しない限界の値が存在する.この研究ではSがS=c_0+c_1EXP(-c_2),(nは作用させた波の数)で近似できることを示し,ケースごとに定数c_0,c_1,c_2を決めて波高の関数として定式化した.さらにこの研究では変形の面積ばかりでなく変形の形状も法面に作用する波の数の関数として定式化した.この結果と,堤体に作用する不規則波の波高の確率分布としてレーリー確率分布とを結びつけて,1ストームでの堤体の期待変形量の計算方式を示し,いくつかの例について期待変形量を示した.この研究では当初レベル2法による耐波信頼性解析を計画していたが作用波の確率特性と堤体法面の変形量が結合できたので,近似的に堤体の変形許容量を破損関数とするレベル3法による信頼性解析を可能とすることができた.
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