平成7年度では、傾斜サーマルについて理論的・実験的研究を行った。さらに、傾斜ブルーム先端部と傾斜サーマルの特性量の相違についても比較検討した。以下、具体的な研究成果について報告する。 (1)傾斜サーマルの流動特性について サーマル形状、層厚変化率、先端移動速度、平均浮力、Overall Richardson数、連行係数などの特性量を底面傾斜角度θ=5〜90°の範囲において普遍定量化した。傾斜サーマルの先端移動速度、平均浮力およびOverall Richardson数の特性についてはこれまで全く解明されておらず、本研究結果が唯一のものである。また、連行係数については、全く異なる2通りの方法で算定することによって、その信頼性を高めた。結果的に両者はほぼ一致し、底面傾斜角度に対して線形的に増大することが解った。これより、従来の連行係数は約50%も過大評価されていることが明らかとなった。 (2)傾斜サーマルの予測モデルについて 層厚、先端移動速度および浮力の挙動を予測できる積分型予測モデルを新たに構築した。本モデルの特徴はこれまで全く解明されていなかった運動方程式中の抵抗係数値が底面傾斜角度θ=5〜90°の範囲で定量化されていることである。得られた抵抗係数値は完全乱流状態において、底面傾斜角度に依存せずほぼ一定であり、同様な形状を有する固体の抵抗係数より小さい値を取ることが明らかとなった。さらに、予測モデルの適用に当たって極めて重要となる仮想原点位置についても底面傾斜角度θ=5〜90°の範囲で定量化を行った。本モデルを仮想原点から適用し、実験値と比較検討した結果、本モデルは傾斜サーマルの流動特性を極めて精度良く予測できることが確認された。 (3)傾斜サーマルと傾斜プルーム先端部の流動特性量の比較について 傾斜サーマルと傾斜プルーム先端部の流動特性量の直接比較を試み、次のような知見が得られた。形状およびそれに関する特性量は、両流れにおいてほぼ同じである。最大層厚変化率は両流れにおいてほぼ同じであり、ともに流下距離xに比例する。先端移動速度は明らかに異なり、サーマルではxに依存せず一定であるが、プルーム先端部ではx^<1/2>に比例する。連行係数は、両流れにおいてほとんど一致する。さらに、平成6年度の結果も考慮すると、平均浮力はサーマルではx^2、プルーム先端部ではxに比例し、Overall Richardson数は両流れともに流下方向に一定となることが分かった。
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