(1)ラグーン内に低潮時生ずる干潟の地形変化を引き起こすのは上げ潮時七北田川河口域からラグーンに流入し、下げ潮時ラグーンから逆に流出する往復流れである。(2)ラグーンへ流入する速度は大潮時には最大80cm/sec、平均30cm/sec程度で、下げ潮時の値はこれより小さい。底質のd_<50>として0.3mmを用いると限界専断速度は15cm/sec程度と推定されるので、ほとんど毎潮汐サイクルで底質が移動する期間がある。(3)ラグーン入口部分の地形は澪の幅が狭くなっており流速が大きいので底質移動が起こりやすく、干潟が生じている部分に至るとラグーンの幅が急に拡大して流速が減少するので、底質は沈降し易い。一方、下げ潮時には干潟部分に沈殿した底質が元の方向に移動する量は上げ潮より少ない。これが干潟が発達する理由である。(4)夏期には流速が増大するので干潟底面は洗掘されやすく干潟底面は低下し、冬季には流速が減少するので干潟底面は洗掘されにくく干潟底面は逆に上昇する。(5)七北田川河口が砂州により閉塞している期間は、ラグーンの流速は数cm/sec以下に低下する。このため、ラグーンでは水中のSSの沈殿が増加し、干潟底面は上昇する。(6)河川洪水により七北田川河口の砂州がフラッシュされ流れの疎通がよいときは、ラグーン内の流速は増大し底質移動が起こり易くなり、干潟底面が低下する。(7)干潟上の位置によって地形変動の大きさが異なる。主流付近では変形しやすく、主流からはずれたところでは変形は少ない。(8)干潟上の底生生物の巣穴は、砂質のところでは底面がやわらかくし底質移動を起こり易くする。しかし砂泥質のところでは巣穴があってもかたさにあまり影響がない場合もあるようである。(9)生物の生息数は夏期に多く、主流に近い測点では流速が大きく底質の移動が起こりやすいので巣穴は目立たない。冬季には、生物は少なく、流速が比較的小さいので底質の移動が少ないので巣穴が目立つ。
|